詩織〜my song,my words〜

ブログ主、和音の心象スケッチブック。
または日々生活の中からふと湧き出た詩達の、
物置き保管庫のようなものです。

青白い月

扉開ければ

伸びる一筋の影

窓辺に座ったまま

空を見上げていた あなたは

こんな青白い月の下


別れとは美しいものだと

そうひとつ呟く

その言葉の意味はまだ

分からず側へ歩み寄って

そっと抱きしめた


涙を一粒

それは溢れ出た心

綺麗なグラスに注いだら

今夜乾杯しようか


出逢いは優しくて

愛情は激しくて

別れは美しいと

それを静かに想う

あなたの哲学

こんな青白い月の下


やがて朝はくる

差し込む温かな光を

あなたは緑の葉に水をやり

空を見上げていた横顔

今夜月はまた欠けてゆく

人形島

忘れられた岩の上に

まだ残されたままの記憶

さらわれる意識を手招きで

今 こちらへおいで


ねぇ愛して?

ねぇ慰めて?


綺麗な顔をください

叫べる声をください

私達に

行かないでください

ここにいてください

私達のこと

怖がらないで


時間が止まったこの場所に

レクイエムはまだ聴こえない

遠く遠く波の向こうに

あの子はいるのだろうか


ねぇ近づいて?

ねぇ触れて?


赤い服を着たいな

青い眼で見たいな

私達も

色褪せた全てを

鮮やかに染めて

私達のこと

もう一度


不思議なことが

いくらでも起こる世界ならば

どうしようもなく涙が出るのか

教えて 誰か 教えて


綺麗な顔をください

叫べる声をください

私達に

行かないでください

ここにいてください

私達のこと

怖がらないで


行かないでください

ここにいてください

私達のこと

連れていって

ピアニスト

自分に向き合って深呼吸

目の前には眩しいスポットライト

舞台に上がる それは孤独


ひとつフッと息を飲み込んで

白と黒の無機質なそれを

熱くなる指で支配する


流れ出す単一な旋律に

絡まり出す法則に従う調和が

僕の鼓動のドアを壊した


今 空気に放たれた音は

今 この時を包むハーモニー

ここには誰も何もない

届け届け 誰かの心へ

響け響け 世界を飲み込んで

僕の存在を ああ 教えてくれ


やがてふいに意識が遠ざかる

視界に滲む危険信号が

僕の弱気にブレーキをかけた


どんどん早くなる

どんどん置いていかれる

止まらないで

最後まで走り抜いて


今 空気に放たれた音は

今 この時を包むハーモニー

ここには誰も何もない

届け届け 誰かの心へ

響け響け 世界を飲み込んで

僕の存在を ああ 教えてくれ


やがて音を乗り越えた先で

僕は新しい僕に出会うだろう

それならこの震えた細い指を

どうかそっと握って欲しい


また次の歌を紡ぐために