ピアニスト
自分に向き合って深呼吸
目の前には眩しいスポットライト
舞台に上がる それは孤独
ひとつフッと息を飲み込んで
白と黒の無機質なそれを
熱くなる指で支配する
流れ出す単一な旋律に
絡まり出す法則に従う調和が
僕の鼓動のドアを壊した
今 空気に放たれた音は
今 この時を包むハーモニー
ここには誰も何もない
届け届け 誰かの心へ
響け響け 世界を飲み込んで
僕の存在を ああ 教えてくれ
やがてふいに意識が遠ざかる
視界に滲む危険信号が
僕の弱気にブレーキをかけた
どんどん早くなる
どんどん置いていかれる
止まらないで
最後まで走り抜いて
今 空気に放たれた音は
今 この時を包むハーモニー
ここには誰も何もない
届け届け 誰かの心へ
響け響け 世界を飲み込んで
僕の存在を ああ 教えてくれ
やがて音を乗り越えた先で
僕は新しい僕に出会うだろう
それならこの震えた細い指を
どうかそっと握って欲しい
また次の歌を紡ぐために